行方市×JIDA デザインワークショップを取材してきました

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JIDAデザインイベントを取材してきました

「公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会/JIDA」は、プロフェッショナルなインダストリアルデザインに関する唯一の全国組織です。
「調査・研究、セミナー、体験活動、資格付与、ミュージアム、交流」という公益6事業を中心に行なっていますが、その活動の一環として去る6月4日(土)、茨城県行方市において「行方市×JIDAデザインワークショップ 身近なものを使って、デザインの楽しさや物の大切さ、SDGsを一緒に学ぼう!」を開催しました。茨城県デザインセンターも視察させていただきました。

3つのワークショップ

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 当日は3つのワークショップが行われました。
 1つはエコでユニークなクッション素材を使った「エコデザイン体験」。人型の小さなスポンジ(梱包のクッションに使われる“捨てられない”緩衝材です)をパズルのように組合せてデザインします。几帳面に並べて幾何学模様を作る子供がいたり、思いのままに大胆に配置し、作品に込めたストーリーを語り出す子供がいたりと、一人ひとりの性格がうかがい知れました。
 2つめは「端材とネジを使ったキーホルダー製作」。端材、しかも間伐材の端材を触りながら解説を受け、学校の教科書を読んだだけではピンと来ない森林保全について、子供たちは体感で理解を深めていました。また、ドライバーやトンカチなどの工具は初体験だったという子供も多く、自分の手を動かしてモノを作る楽しさも味わったようです。
 そして、3つめは「電車デザイナー体験」。思い思いに積み木の電車を作り、車体に色塗ったり、絵を描いたりしていきます。絵具と筆が用意されていますが、中には筆を使わず、ティッシュペーパーを丸めてポンポンとスタンプする画法を編み出す子供も。自由な発想にお母さんも驚いていました。完成後はプラレールで走らせて電車ごっこ。小さな運転士さんがたくさん誕生しました。

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「地域」の中でデザインイベントをやる意義

 地域の中でこのようなワークショップを行う意味について、JIDA正会員であり、茨城県のデザイン政策アドバイザーである蓮見孝先生(筑波大学名誉教授、札幌市立大学名誉教授)にうかがいました。
 「コミュニケーション力、創造力を伸ばす効果のあるワークショップ。これらを地域の中で行えば、コミュニティづくりのための基本体験を共有する場となります。
昔は学校から近所のお兄さんお姉さんと一緒に遊びながら帰ったもの。木の枝でもなんでも何かに見立てて遊びました。その遊び方は年長者から年少者へ伝授され、遊びを通して子供たちの共同体が作られました。一方、今の行方市はスクールバスで通う児童も多く、そうした経験が少ないですね。この地域でワークショップを行う意義は大きいと思います。」
 また、同じくJIDA正会員であり、茨城県デザインセンターとも関わりの深い吉田晃永先生(東京デザイナー学院非常勤講師)は、昨今の子供たちの特性とも絡め、次のように話します。
「これを皮切りに県内各所でやってみたい。それぞれの地域にそれぞれの課題があり、それにデザインのチカラで挑んでいきたいと思います。
 また、このワークショップはトライアンドエラーを遊びつつ学ぶもの。今の子供たちは最短距離で正解にたどり着きたいと考えてしまいがちですが、トライアンドエラーを繰り返す中から新しい価値が生まれます。エラーは怖くないということを子供のうちに体感して欲しいですね。」

デザイン×地域の可能性

 「行方市×JIDA」の活動はこれからも続くようです。
「この地域には廃校になった小学校が数多くあります。これらを活かし、ミュージアムなどできたらいいと考えています。将来的には、行方市が『デザインのまち』となっていくよう、今後も活発に活動をおこなう予定です」と蓮見先生。
 行方市の人口は減少傾向にあり、2015年を100とすると、2045年には55.8%まで減少すると予測されています。これは行方市に限ったことではありません。いかにして人口を確保するかは、全国的かつ喫緊の課題となっています。デザインによるまちの魅力づくりは、良質な関係人口、活動人口の呼び込みの一端にもなり得るのではないでしょうか。