Vol.8 岡倉天心・五浦発信プロジェクト

茨城大学が所管する天心遺産などを活用して学生たちと地元の人たちが取り組む地域プロモーション。今回は各年度の代表をはじめとした茨城大学の学生たちに話しを伺いました。

地域資源を掘り起こし
デザインで地域の魅力を発信する
学生たちのプロジェクト

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▲IDS2017で五浦コヒーを媒介としたプロモーションが知事選定になった際のメンバー

IDSの選定を受けて
自分たちの「使命」も再認識できた

ー「岡倉天心・五浦発信プロジェクト」は茨城大学の教職員・学生が中心となって2016年5月に発足したプロジェクト。現在は岡倉天心の業績のみならず北茨城市の魅力、茨城大学と五浦にある「六角堂」との関わりなど、広く発信していきたいという学生有志の皆さんがプロジェクトとして活動しているとうかがっています。
 2017年にテーマセレクション部門で知事選定を受けました。IDSに応募しようと思われたきっかけは何ですか。

丹治彩弥乃さん(2018年度代表)  「岡倉天心・五浦発信プロジェクト」の認知度を上げられると思ったからです。指導教官である一ノ瀬先生から「こういうのがあるけれど、挑戦してみる?」と紹介していただきました。
 「知事選定」をもらえた理由は、私たちと茨城県を代表するコーヒーメーカー「サザコーヒー」が共同開発した「五浦コヒー」を商品としてだけでなく、岡倉天心や五浦の魅力を発信するコミュニケーションツールとして活用した点が高く評価されたようです。
 選定を受けたことで、プロジェクトの認知度が上がっただけでなく、「五浦コヒー」の価値も上がりました。学園祭である「茨苑祭」では「五浦コヒー」を紹介するイベントを行うなどしたことで、学内でも認知度が上がったように思います。
 また、私たちも自分たちの立ち位置というか使命を再認識できました。

普通の学生生活を送っていたのでは
体験できないことや出会えない人たちに出会えた

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ー「岡倉天心・五浦発信プロジェクト」に参加して皆さんにはどんな変化がありましたか。

鈴木楓子さん(2017年度代表)  参加している学生は教育学部だけでなく人文学部、理学部、工学部というように多学部の学生が集まっていますので、多角的な視点を持つことができるようになりました。
 自分の思いばかりでなく、相手の意見に共感したり、相手の意見を取り入れたりしながらクリエイトしていくことは、就職後にも活かせると思います。
 私はこのプロジェクトの活動を通して、単に商品を作るだけではなく、企画する過程で人々や地域の背景を掘り起こし、人と人とがつながって何かを創造していくことの奥深さや意義、可能性を学びました。
 今回はサザコーヒーさんと連携しましたが、実際のビジネスに触れることで、「売上をどう伸ばすのか?」という経営的な視点を得ることができました。具体的には、私たち学生がお客さんの目の前で「五浦コヒー」を淹れるパフォーマンスをして売上につなげる、といった経験を積むことができました。

小野崎邦彦さん  このプロジェクトは授業の一環でなく、単位取得とは関係のない任意の活動です。学生生活+αの活動をしたいと思っていましたので、入学前にツイッターでこの活動を知ったとき、「参加してみよう」と思いました。実際に参加してみると、地域を代表する企業の方や地域の方々と学外で交流する機会があって、とても貴重な経験ができたと思います。

岩田健太郎さん  学生にどこまでできるのか、最初は正直不安で、手探り状態でしたが、岡倉天心ゆかりの茶道家の方や北茨城の方々、そしてサザコーヒーの鈴木会長など普通に学生生活を送っていたら関わることのできなかった方々と関われたことが楽しかったですし、人生の財産となりました。
 とくに鈴木会長は面白いことはすぐに「やってみなよ」と言ってくれ、「ああ、こんな大人がいるのか」と感動しました。とても魅力的な大人に出会えたことが本当に良かったです。

「五浦コヒー」に続く新しいチャレンジを
学生の瑞々しい感性で模索

ーIDSに期待することは何ですか。

丹治  受賞後、ひたちなか市のファッションクルーズを会場にデザインフェアを開催した際「五浦コヒー」の試飲・販売と五浦コヒー画のワークショップ(コーヒーで絵を描く)を開いてくださいましたね。私はそれに参加しました。その時に他の受賞事業者の方と交流する機会に恵まれ、さまざまな意見交換をさせていただきました。これだけでもとても実りのあるものでしたが、実はそれからしばらく経って、他の場所でばったり再会し、さらにつながりの度合いを深めることができました。IDSを通してもっと交流の機会が欲しいと思います。実社会でビジネスをされている方の意見をうかがうことは、この五浦発信プロジェクトの未来のためにもとても重要です。
 それに「大人」とつながり、お話しをうかがえることは学生ではできない経験です。

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▲デザインフェアで五浦コヒーの試飲・販売を行う丹治さん(中央)

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ーでは、プロジェクトの未来、展望についても聞かせてください。

田中響さん(2019年度代表)  私は現在、一応プロジェクトリーダーを務めていますが(笑)、ここまで来て少し「五浦コヒー」の成功の実感もつかめてきました。これからは新しいことにチャレンジしたいと思います。今は自分たちで自由にアイデアを出し合っている最中です。
 私の個人的なアイデアですが、「椿」を使って何かできないかと考えています。というのは、岡倉天心は『茶の本』の中で「椿」に触れ、北茨城に生家が残る野口雨情は「おしゃれ椿」という詩を残しています。実際、野口雨情の生家の裏には椿が群生しています。雨情もきっとこの花を眺めたことでしょう。そこで椿の花や椿油を活用したプロモーションも検討しています。北茨城には温泉もありますから、それと掛け合わせて「足湯」というのも面白いと思います。花びらを散らして視覚に訴え、椿油で嗅覚や触覚に訴えます。毎年11月に開かれる「茨苑祭」で行えば、冬の寒さで客足も伸びると思います。
 これまで五浦地区に絞っていましたが、北茨城は広いです。磯原地区にまで広げて地域資源を探っていきたいですね。

小原迪さん  所属サークルのノウハウを生かしたいです。実は私はテーブルゲーム研究会に所属しています。ボードゲームで何かできないかと思っています。「百人一首」のようなカードゲームもいいでしょう。会話の弾むコミュニケーションツールとして開発することもいいのではないかと思っています。

島崎はるかさん  私は学内にこそこのプロジェクトと北茨城の良さを広げたいと思います。自分の通っている茨城大学が五浦の六角堂と関わりがあることを知らない学生も少なくありません。知る機会づくりをしていきたいと思います。そのためのツールを作り、発信していきたいです。

「岡倉天心・五浦発信プロジェクト」を
茨城大学を代表するプロジェクトに育てて欲しい

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▲今回、インタビューに応じてくださった学生たち。ライブラリーカフェの前で


ープロジェクトリーダーさんの「一応」の一言に、「みんなでつくっている」という感じが表れていますね。それに、皆さんそれぞれが「やりたいこと」を持っていることに感動しました。立ち上げメンバーはもう卒業となりますが、先輩から後輩へとこのプロジェクトは引き継がれていますが、後輩から先輩に聞きたいことはありますか。

佐伯亜衣子さん  この「岡倉天心・五浦発信プロジェクト」にどうなっていって欲しいですか。

丹治 「茨城大学といえば『岡倉天心・五浦発信プロジェクト』というのがあって、面白いことをやっているよね」と言ってもらえるプロジェクトになって欲しいですね。
 こうした活動は続けることが大事ですし、続けるには「楽しむこと」が大事なので、後に続く皆さんには思い切り楽しみながら活動を続けていって欲しいと思います。

●プロフィール

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前列左から 
理学部2年 佐伯亜衣子
理学部1年 島崎はるか
人文社会科学部1年 浅野楓
工学部 助教 一ノ瀬彩
人文社会科学部4年 丹治彩弥乃
人文社会科学部3年 鈴木楓子

後列左から
理学部3年 田中響
人文社会科学部1年 小野崎邦彦
人文社会科学部3年 岩田健太郎
理学部1年 小原迪
理学部ス2年 塙拓斗

岡倉天心・五浦発信プロジェクト
茨城大学が所管する天心遺産や研究所の魅力、学術的な蓄積を活用して、学生たちと地元の人たちが六角堂や『茶の本』 に表された天心の思想”Teaism”に触れ、天心の思想や五浦の魅力を学び、地域プロモーションに取り組む。現在は、北茨城市全域を対象に地域資源の発掘・活用にも意欲的に取り組んでいる。